金曜日きんようび（Friday)

　私わたしは、今年ことし、この会社かいしゃに入社にゅうしゃしたの。

　毎日まいにち、忙いそがしい。

　でも、楽たのしいこともあるの。

　それは、彼かれと一緒いっしょに働はたらけること。

　彼かれは、私わたしと一緒いっしょに、今年ことし、入社にゅうしゃしたの。

　でも、彼かれは、二ふたつ年上としうえ。

　私わたしは、彼かれが好すき。

　でも、私わたしは、そのことを話はなしていないの。

　私わたしは、自分じぶんの気持きもちを彼かれに話はなしていないの。

　今日きょうは金曜日きんようび。

　明日あしたは休やすみ。

　だから、私わたしは、彼かれに言いいたかったの。

　……明日あした、一緒いっしょに遊あそびに行いこうって。

　でも、言いえなかった。

　今週こんしゅう、ずっと、同おなじことを考かんがえていたの。

　……今度こんどの土曜日どうようびに、一緒いっしょに遊あそびに行いこうって。

　でも、言いえなかった。

　もう、金曜日きんようび。

　その金曜日きんようびも終おわって行いく。

　五時ごじになって、みんな帰かえって行いく。

　でも、私わたしは、まだ、働はたらいている。

　彼かれが立たち上あがった。

「おさき」

　彼かれは、笑顔えがおで私わたしに言いった。

　彼かれが帰かえって行いく。

　でも、私わたしは、まだ、仕事しごとがあるの。

　私わたしは、一人ひとりで、仕事しごとをしている。

　……ああ、彼かれが帰かえって行いく。

　……ああ、一日いちにちが終おわって行いく。

　……ああ、一週間いっしゅうかんが終おわって行いく。

　私わたしは、一人ひとりで、仕事しごとをしている。

　……どうして、彼かれに言いえなかったのだろう。

　……どうして、私わたしは、一人ひとりなのだろう。

　やっと、仕事しごとが終おわった。

　もう、誰だれも、いない。

　私わたしは、部屋へやの電気でんきを消けした。

　外そとは暗くらかった。

　私わたしは、玄関げんかんを出でようとした。

　すると、そこに、人ひとが立たっていた。

　彼かれだった。

　彼かれが、そこで、私わたしを待まっていた。

　彼かれは言いった。

「駅えきまで、一緒いっしょに行いこう」

　私わたしは答こたえた。

「うん。……

　……あのね、……明日あしたね……」

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