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 看護婦かんごふ(nurse)


 ぼくは、そのとき彼女かのじょきになりました。

 それは、もう、ずっとまえのことです。

 何年なんねんまえのことです。


 ぼくは、ある病気びょうきで、入院にゅういんしていました。

入院にゅういんしている:to be in hospital)

 ぼくは、何度なんど発作ほっさこしました。

発作ほっさこす:to have a seizure)

 発作ほっさは、ひるでもよるでもきました。

 そのたびに、医者いしゃ看護婦かんごふはしってました。

 そして、注射ちゅうしゃ点滴てんてきをしてくれるのです。

注射ちゅうしゃ:injection)
点滴てんてき:intravenous drip)

 しばらくすると、らくになります。

 しかし、また、発作ほっさきるのです。

 ぼくは、そんなことをかえしていました。


 ある発作ほっさあとぼくねむっていました。

 ますと、その看護婦かんごふが、ぼくのそばにすわっていたのです。

 彼女かのじょは、じっとぼくていました。

 ぼくますと、彼女かのじょは、すこ微笑ほほえみました。

微笑ほほえむ:to smile)




 ぼくは、おもいました。

 彼女かのじょは、ぼくねむっているあいだ、ずっと、そばにいてくれたのだろうか。……

 彼女かのじょは、わか看護婦かんごふでした。

 看護婦かんごふになったばかりでした。


 ぼくは、それからも、何度なんど発作ほっさこしました。

 発作ほっさあとは、いつも、くすりねむりました。

 そして、ますと、彼女かのじょが、そばにいるのです。


 きっと、仕事しごといそがしいのに、それでも、ぼくのことがになって、てくれたのでしょう。

 ぼくは、彼女かのじょきになりました。

 ぼくは、彼女かのじょに、その気持きもちをおうとしました。

 しかし、ぼくには、なぜか勇気ゆうきがありませんでした。

勇気ゆうき:courage)




 あるぼくますと、彼女かのじょが、そこにいました。

 しかし、彼女かのじょは、ぼくていませんでした。

 彼女かのじょは、微笑ほほえみませんでした。

 彼女かのじょは、とおくをていました。

 そして、彼女かのじょから、なみだながれていました。

なみだ:tears)

 彼女かのじょいていました。


 ぼくは、どうしたのですか? とたずねようとしました。

 しかし、ぼくには、そんな勇気ゆうきもなかったのです。


 そして、つぎ彼女かのじょは、いなくなりました。

 病院びょういんめたのです。

める:to quit)

 理由りゆうはわかりません。


 いまでも、ぼくは、彼女かのじょのことをおもします。

 そして、ぼくは、何度なんどおもいます。

 どうして、ぼくは、彼女かのじょなにわなかったのだろう。

 彼女かのじょが、あれほど、やさしくしてくれたのに、……

 どうして、ぼくは、いている彼女かのじょに、なにはなしかけなかったのだろう。


 ……ごめんなさい。


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