傘かさ（umbrella)

（高校生こうこうせいの男女だんじょの話はなし）

　彼女かのじょは、学校がっこうの玄関げんかんに立たっていました。

　ひどく雨あめが降ふっていました。

　止やみそうもありません。

　彼女かのじょは帰かえれなくて困こまっているようでした。

　一人ひとりの男子だんし生徒せいとが、来きました。

　彼かれは、傘かさを持もったまま、しばらく、外そとの雨あめを見みていました。

　それから、彼女かのじょの姿すがたをじっと見みていました。

　彼かれは、彼女かのじょに言いいました。

「傘かさ、無ないの？」

「うん」

「じゃあ、一緒いっしょに帰かえる？」

「うん」

　二人ふたりは歩あるき始はじめました。

　一ひとつの傘かさに入はいって、歩あるき始はじめました。

　二人ふたりが話はなしをするのは、初はじめてでした。

　二人ふたりは、時々ときどき、楽たのしそうに笑わらいました。

　彼女かのじょは、かばんの中なかに折おりたたみ傘がさを持もっていました。

　でも、それを使つかわずに、彼かれが来くるのを待まっていたのです。

　彼かれも、知しっていました。

　彼女かのじょが、いつも、小ちいさな傘かさを持もっていることを……。

　彼女かのじょが、彼かれを待まっていたことを……。

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