|
おさななじみ(a childhood friend)(おさななじみ:子供のころからの友達) (ある女性の恋の話) 小学生のころ、私には、仲の良い友達が、いました。 近くに住んでいたので、彼女とは、よく一緒に遊びました。 彼女には、お兄さんがいました。 彼は、私よりも二つ年上でした。 彼女と、彼女のお兄さんは、とても、仲の良い兄妹でした。 二人は、いつも、一緒にいました。 だから、私も、二人と、いつも一緒にいたのです。 三人で、よく遊んだのです。 でも、そのころの彼について、具体的に思い出せることは、あまり、ありません。 (具体的に:in detail) 何しろ、小学生のころの話ですから。 ただ、その中でも、一つだけ、はっきりと覚えていることがあります。 それは、三人で遊んでいた時のことです。 三人は、彼女の家で、遊んでいました。 隠れん坊か、何かをして、遊んでいたのだと思います。 (隠れん坊:hide-and-seek) 私は、押し入れの中に隠れていました。 (押し入れ:closet) 彼も、私の横にいました。 押し入れの中は、狭く、暗く、そして、静かでした。 とても、静かでした。 私には、彼の呼吸が聞こえるような気がしました。 暗くて、何も見えないのに、彼の体を感じているような気がしたのです。 その時、偶然、彼の手が、私の手に触れました。 (偶然に:by chance) それは、偶然でした。 二人とも、驚きました。 「あ、」 「あ、」 ……それだけでした。 その後、どうなったのか、何も覚えていません。 きっと何もなかったのだと思います。 でも、その時の二人の声を、今でも、はっきりと覚えています。 それから、しばらくして、彼女の家族は、引っ越してしまいました。 私が小学校の三年か四年の時だったと思います。 だから、それ以来、彼女にも、彼女のお兄さんにも会っていませんでした。 しかし、偶然とは不思議なものです。 あれから、何年がすぎたのでしょう。 私は、中学に行き、高校に行き、東京の大学に行きました。 そして、就職しました。 (就職する:to get a job) 結婚しましたが、それは長く続かず、すぐに離婚してしまいました。 (離婚する:to get divorced) 私は、一人の生活に戻りました。 そんなある日、会社から帰る電車の中で、ふと、そばに立っている男性のことが気になったのです。 なぜ気になったのか、わかりません。 私は、その男性の顔を見ました。 その男性も、私の顔を見ました。 二人は思わず、声を出しました。 (思わず:without thinking) 「あ、」 「あ、」 それは、彼だったのです。 子供の頃に一緒に遊んだ、友達のお兄さんだったのです。 もちろん、彼は、すっかり大人になっていました。 もう、背も伸びて、顔の形も変わっていました。 でも、わかりました。 すぐに、彼だと、わかりました。 きっと、彼も、私のことに気が付いたのでしょう。 そして、驚いたのでしょう。 そして、二人の生活が、始まりました。 それは、偶然始まりました。 もし、神がこの偶然を与えてくれたのなら、神様は、二度も、それを与えてくれたのですね。
|
|