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 ピアノ(piano)



 去年きょねんおおきな地震じしんがあった。

地震じしん:earthquake)

 たくさんのいえが、まだ、こわれたままだ。

 そんなまちを、わたしあるいていた。


 あるいえなかに、ピアノがあった。

 いえっても、もう、かべ屋根やねもなかった。

 いえよこには、おおきながあった。


 わたしが、そのいえまえとおぎようとしたとき、ピアノのおとこえた。

 おとが、ひとつだけ、ポロンとこえた。


 わたし不思議ふしぎおもった。

 一年いちねんも、あめかぜなかにあったピアノが、おとすはずがない……。

 いや、たとえ、おとたとしても、そこには、だれひとがいない。

 ひとがいないのに、ピアノがるはずがない……。


 わたしすここわくなった。

 わたしいそいでとおぎようとした。

 そのとき、また、おとこえた。

 やはり、ピアノのおとだった。


 わたしは、勇気ゆうきして、そのピアノにちかづいた。

勇気ゆうき:courage)

 ピアノのふたは、いたままになっていた。

 そして、鍵盤けんばんうえに、ちていた。

鍵盤けんばん:keyboard)
:nut)

 きっと、が、からちてて、ピアノがったのだろう。


 かべ屋根やねくなったいえなかでも、ピアノは、こわれていなかった。

 きっと、このおおきなが、かぜあめから、ピアノをまもってきたのだろう。


原作げんさく(original):ピアノ Ryunosuke Akutagawa)


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