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仙女(せんにょ)
(仙女:女性の神 または 神に近い人) 美しい女が、おじいさんを叩いていた。 青年は、女を止めようとした。 すると、女は不思議なことを言った。 (青年:a young man) (叩く:to hit; to knock) (不思議な:strange; mysterious)
昔、中国のある田舎に、青年が一人住んでいました。 (田舎:the country; the countryside) 何しろ中国のことですから、桃の花の咲いた窓の下で、本ばかり読んでいたのでしょう。 (桃:a peach) この青年の家の隣に、年の若い女が一人、住んでいました。 とても美しい女でした。 青年は、この若い女を不思議に思っていました。 それも当然です。 (当然:It is natural that ….) 彼女が誰なのか、彼女が何をして暮らしているのか、誰も知らなかったのですから。 ある風のない春の日の夕方、青年が、ふと外へ出てみると、この若い女が、何か叫んでいました。 (叫ぶ:to shout, to cry) その声は、どこかの鶏が、のんびりと鳴いている中で、とても目立って聞こえてくるのです。 (のんびり:relaxed; quiet) (目立って:conspicuously; remarkably) 青年は、どうしたのか、と思いながら、彼女の家の前へ行ってみました。 すると、怒った彼女は、年をとった男の頭を、ぽかぽか、叩いているのです。 (年をとった~:old) しかも、その男は、涙をぽろぽろ流しながら、必死であやまっているではありませんか! (必死で:desperately) 「これは一体どうしたのです? 何もこんなおじいさんを、叩かなくてもいいじゃありませんか!──」 青年は彼女を止めようとしました。 「第一、年上の人を叩くのは、良くないことです」 (年上:older; senior) 「年上の人を? この男は、わたしよりも年下です」 (年下:younger) 彼女は言いました。 「冗談を言ってはいけません」 (冗談:a joke) 「いえ、冗談ではありません。 わたしは、この男の母親ですから」 青年は、驚いてしまい、思わず、彼女の顔を見つめました。 (思わず:unconsciously, without realizing it) すると、やっと彼女は、男を放しました。 (放す:let go of …) そして、その美しい彼女は、青年をじっと見つめて、こう言うのです。 「わたしは、この息子のために、どのくらい苦労をしたか、わかりません。 (苦労をする:to have trouble) けれども、息子は、わたしの言葉を聞かずに、わがままなことばかりしていましたから、とうとう年をとってしまったのです」 (わがまま:selfish) (年をとる:to get old) 「でも、……このおじいさんは、もう七十くらいでしょう。 その母親だというあなたは、一体いくつなのです?」 「わたしですか? わたしは三千六百歳です」 青年はこの言葉を聞いた時、この美しい隣の女が仙人だったことに気づきました。 (仙人:神、神に近い人) (気づく:to notice, to recognize) しかし、もうその時には、美しい彼女の姿は、どこかへ消えていました。 (姿が消える:to disappear) おだやかな春の日の光の中に、おじいさんを残したまま。…… (おだやかな:calm, quiet)
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